「退職代行」サービスにはご注意を

2021-06-26

「退職代行」とは,「使用者に対する退職の意思表示を,労働者の代理人または使者としておこなうこと」ということになりそうです。この「退職代行」というものが近年ビジネスとして成り立つようになっているようです。

たしかに「退職」「解約」みたいな意思を自分で伝えるのは気が重いみたいなところはあるでしょうし,パワハラ体質の会社なら退職の意思表示をしたことに対してパワハラ発言を行うこともあるでしょうから,「退職代行」ビジネスを100%悪とまで決めつけることはできないかもしれません。

とはいえ,退職したいと思う場合,それには普通は理由があるはずです。 

今の仕事とは別の目標を追いたい等の積極的理由ならよいかもしれません。                                 しかしながら,給料を下げられたとか,ミスしたことで給料から天引きされるとか,長時間労働で具合が悪いとか,ハラスメントがあるとか,そういった理由なら問題です。

年令などの理由で一旦離職したら再就職が簡単ではない場合など,できることなら,在職のままこれらの問題を改善して(裁判をするまでもなく弁護士からの連絡で改善することもある),職場に残る手段をとった方がよい場合があるかもしれません。

また,ハラスメントなどは一般的に解決は簡単ではないのですが,退職していなければ証拠がとれたり一定の和解が可能だったりします。ところが,退職してしまうと解決の手段が消滅してしまったりします。            残業代の事件も,タイムカードがない場合など,退職してしまうと労働の実態が不明になり,請求が困難となるかもしれません。

さらに,退職届を提出したことに対して「引継」を要求された場合,これについてどのように対応するかは一律に回答できるものではありません。

そもそも,普通に退職の意思表示をしてしまうと,いわゆる自己都合退職として雇用保険や退職金で不利な取扱がなされることとなるでしょうし,まさかとは思いますが年次有給休暇を消化しないまま退職してしまった後で代償金を要求しても通常は無駄です。

弁護士の行う「退職代行」ならば,これらの問題に注意を払い,必要に応じて交渉,法的手続を取るなどした上で解決に導いているものと信じたいところです。                                      もしもこれらの問題に十分注意を払わないまま,安易に退職の意思表示をしてしまう弁護士がいたとしたら,「大問題」とだけは言っておきましょう。

ましてや,弁護士以外の一般の「退職代行」業者が,有償でこれらの問題を相談し,交渉,法的手続を取るなどすると弁護士法違反(いわゆる「非弁行為」)になります。いい方を代えれば,できるのは「退職の意思表示を使者としておこなうこと」だけで,上記の問題には踏み込めません。                                                           労働者の方が「特に問題はなくあとは退職の意思表示をするだけ」と判断がつくならともかく,そういうことは普通は難しい(経験のある弁護士でも判断に悩む場合はあります)のだから,原則として弁護士以外の「退職代行」業者は利用すべきではないと思います。 

ちなみに,単純に退職の意思表示を代理するだけの場合,仮に一応の問題を検討した結果であったとしても,「退職代行」弁護士の報酬として5万円は高いなあ=私ならもう少し安くやると思います。ましてや,「退職の意思表示を使者としておこなう」だけの「退職代行」業者が3万円もとるのはどうかしていると思います。

くれぐれも,「退職代行」サービスにはご注意を!(小池)

                               

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