役員からの多額の借入金がある場合の節税相談(その2)

2017-06-13

前回のブログで,社長貸付金が多額にある会社において,その社長が亡くなった場合,貸付金により相続税が高額になるという話しをしました。

今回はそれをどのように回避するか話しをしたいと思います。

かつては,これをDESという方法で回避することができました。
DESとは,「デット・エクイティ・スワップ」の略で,債務(デット)と資本(エクイティ)を交換(スワップ)することを言い,借入金である債務を資本金に振り替えてしまえば良かったのです。
具体的には,会社が新株を発行する際,社長が貸付金で現物出資することで貸付金を資本に振り替えることができたのです。

しかし,細かい理由は省略しますが,税法改正により,この場合,会社側に債務免除益が発生することとなり,これによりDESによる相続税の節税がしにくくなりました。

これを克服する手段として,疑似DESという方法が利用されることがあります。
これはDESに似ている手法ですが,以下の手順を踏むこととなります。
 ①銀行が会社に役員借入金分の金額を貸し付ける
 ②会社は,これにより役員借入金を返済
 ③社長は,返済を受けた金額で会社に増資を行う
 ④会社は,増資による払込資金で銀行からの借入金を返済

上記の手順により,結果として役員借入金が消滅し,その代わりに資本が増加することとなり,DESと同様の効果が生じるのです。

ただ,この疑似DESですが,いわゆる「見せ金」に該当するのではないかという懸念が指摘される場合があります。
「見せ金」とは,株式の引受人が金融期間等から借入を行い払込に充てた後,すぐにその資金を引き出して返済に充てるというもので,会社法965条で罰則の定めのある「預合い」の脱法的手段として禁止されております。

しかし,上記の疑似DESについては,厳密な意味において「見せ金」ではないという見解が現在においては主流でしょう。

そもそも,預合いも見せ金も,会社財産が実質的に形成されてないことが問題視されているのです。
上記からすると,疑似DESという手法の場合,純資産は増加している以上(実際には,マイナスがなくなっているという意味ですが)利害関係人を害するおそれがないのですから,「見せ金」ではないというわけです。

以上,前回に続いて,役員から多額の借入金がある場合の相続税の節税についてお話ししましたが,このあたりは非常にテクニカルな部分なので,税理士に相談されることをお勧めします。
(弁護士 税理士 志田一馨)

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