「非正規切り」「派遣村」から4年
4年前,2008年の冬を皆様覚えておられるでしょうか?
そうです,リーマン・ショックを端緒に急激な景気後退が起こり,非正規労働者が大量に解雇・雇止めされ,年末には「派遣村」が設置されたという,あの冬です。
あの冬,私を含む自由法曹団神奈川支部では,藤沢市に大工場をもついすゞ自動車の非正規切りに関して,7本の仮処分を申し立てるなどして奮闘し,「派遣契約が解約されても直ちに『やむをえない事由』(労働契約法17条,民法628条)に当たると解することはできない」という,今となっては当たり前のルールかもしれませんが,平成21年3月30日ニューレイバー事件横浜地裁決定を得るなどしてきました。
あれから4年が経ちました。
政権交代,東日本大震災と世の中は大きく動きましたが,非正規労働者の置かれた立場はほとんど変化はないようです。
そうした中,いすゞ自動車非正規切り事件について,本年4月16日に東京地方裁判所が出した判決(労働判例1054号5頁)は,「不況等の事情変化による生産計画の変更に伴う要員計画に変更がない限り」でしか雇用継続の合理的期待を認めず,要するに要員計画に変更があれば期間労働者の雇止めをフリーパスで認めることにつながりかねない判断をしました。
同事件の弁護団は当然控訴し,現在東京高裁第2民事部に係属しています。
私はここ数日はその書面書きに追われておりました。代々木のS弁護士はさらに重労働となっていることでしょう。
どんなに努力し,技能や実績を上げても,非正規というだけで,これに見合った待遇を受けられず,さらには不安定な立場に置かれるという現状…
こんな不合理な状況は,必ず変わる日が来ます。
問題は,変わり方が二つあること。
一つは,非正規労働者の雇用安定・待遇改善・希望者の正規労働者化。
もう一つは,正規労働者の非正規化…。
残念ながら,後者の兆しが現れてきています。某有名外資系企業では,正規労働者の乱暴な解雇が行われています。
非正規労働者の現状を放置することは,正規労働者にとっても,さらには日本社会にとっても,よくないことだと考えます。(TK)