もう一人のガンディーまたはフィリピンのキリノ大統領

2017-03-08

日比谷公園を歩いていると、偶然にキリノ大統領の碑があることに気づいた。碑には以下のように記載されている。

「私は、フィリピンで服役している日本人捕虜に対し、フィリピン議会の同意を必要とする大赦ではなく、行政上の特赦を与える。
私は、妻と3人の子供、5人の親族を日本人に殺された者として、彼らを赦すことになるとは思いも寄らなかった。
私は、自分の子供や国民に、我々の友となり、我が国に末永く恩恵をもたらすであろう日本人に対する憎悪の念を残さないために、これを行うのである。
やはり、我々は隣国となる運命なのだ。
私は、キリスト教国の長として、自らこのような決断をなし得たことを幸せに思う。
私を突き動かした善意の心が人類に対する信頼の証として、他者の心の琴線に触れることになれば本望である。
人間同士の愛は、人間や国家の間において常に至高の定めであり、世界平和の礎となるものである。」

文章のうちにキリノ大統領の心の揺らぎ・葛藤を感じる。葛藤した末、これでいいのだと自分に言い聞かせるような書き方である。この決断に至るまでの経過はいかに苦渋に満ちたものであっただろう。特赦を与えることについてはいろいろな政治的背景はあるのだろうが、素直に感動する。非難するのではなく赦すことによって加害者の内発性を喚起させようとしたもう一人のガンディーがいる(山森)。

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