同時代のこと、または、私たちの資本論(ロバートライッシュ)

2016-03-03

初代世界編集長だった吉野源三郎がロシア革命のことについて書いていたことを覚えている(うろ覚えだが岩波新書「職業としての編集者」)。吉野が旧制高校生だったか中学生だったかの頃にロシア革命は起こった。その後の歴史を変えるような大きな出来事だったが、吉野はその重要性に気づかなかったという。その重要性に気づいたのはずっと後になってからだったとのことである。
一般に同時代になにが起こっているのかについて、その時代に生きているはずであるが、吉野でなくとも、かえってわかりにくい。何年か経過してみないことにはわからない(フクロウは夕暮れにやってくる)。
BSドキュメンタリー「私たちの資本論」をみていてその感を深くした。ライッシュ(そしてピケティも)、ここ40年くらいの急激な富の蓄積、貧困の増大について統計を用いて説明する。例えば、1960年代~70年代、米国の富裕1%が手にする所得総額はGDPの9%~10%であった。それが2007年には23%である。しかも、上位1%のそのまた上位10%のひとびとが手にする富は3倍増であるという(ライシュの「格差と民主主義」8p)。ここ40年間くらいといえば私がまさに生きていた時代ではないか。漠然とは感じていたがここまでひどくなっていることにまったく気づいていなかった。これらの事実があるからこそ民主党大統領候補バニーサンダースの躍進があるのだろう(山森)。

以下番組の紹介である
2016年2月15日(月)午後11時00分~
2016年2月23日(火)午後5時00分~
アメリカが人類史上例をみない格差社会であることを、気鋭の経済学者がわかりやすく解説。貧富の差が拡大し続ける社会のあり方に一石を投じる、もうひとつの“白熱教室”。
ビル・クリントン大統領時代に労働長官を務めた経済学者のロバート・ライシュが、カリフォルニア大学で行った授業をもとに制作されたドキュメンタリー。トマ・ピケティらの研究を引用しつつ、格差社会に至った原因を明らかにしていく。「経済を動かす中間層が激減したために消費が減退し、政府が負債を抱える悪循環が起きている」などと指摘し、“弱者を守る”という信念から現代アメリカ社会に一石を投じる。
原題:Inequality for all
制作:72 Productions (アメリカ 2013年

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