タクシードライバーの心意気または平岩弓枝の講演

2016-10-08

偶然、ラジオを聴いていたら作家の平岩弓枝が講演していた(NHK第2 10月8日午前6時)。講演で、平岩が私の好きな長谷川伸の愛弟子であることを知った。末期の病にふせた師匠のために平岩は師匠がひいきにしている天ぷら屋から天ぷらを買って食べさせようとしたことがあったという。師匠が入院している聖路加病院までは距離があり、タクシーを使った。運転手は平岩が病気の師匠のために天ぷらを食べさせようとしていることを知り、天ぷらは温かいうちに食べないとうまくないとして、混雑している通常の道ではなく、人通りの少ない狭い裏道をすっとばして病院にたどり着いた。てんぷらはまだ暖かった。師匠は翌日亡くなった。後に平岩は仲間とともにタクシーが通った道を歩いた。とてもではないが危険な道でタクシーが運転できるような道ではなかった。平岩は師匠に天ぷらを食べさせようとしていた自分のためにタクシードライバーが随分とリスクを負ってくれたことを改めて思ったという。交通事故の危険のことはとりあえず措いて、市井の人の心意気を感じさせる話である。平岩の淡々とした話しぶりと併せて涙がとまらなくなった(山森)。

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