「ユダはどこに行った」または「沈黙」
2017-01-25
以前読んでわかったつもりになっていたことが、わかっていなかったことに気づくことがある。遠藤周作の「沈黙」がそうだ。ノートルダム清心女子大の宗教学者山根道公の解説を聞いて思った(NHK心の時間)。
キリスト教上、裏切り者のユダはどこに行ったというのは大問題らしい。これについての遠藤の解釈を山根の解説で知った。
「踏むがいい。お前の足は今痛いだろう~だかその足の痛さだけでもう充分だ。私はお前たちのその痛さと苦しみを分かち合う。そのために私はいるのだから」(「沈黙」240p)
「お前の足が痛むようにユダの心も痛んただのだから」(同)
キリストは自分を信じ、自分のために死んだ殉教者だけでなく、自分を裏切り、自分を磔にさせたことに加担した棄教者にも心を配っている。その言葉の奥にある圧倒的な強さにまさに圧倒された(山森)。
以下はテレビの紹介文である。
作家・遠藤周作が50年前、長崎のキリスト教弾圧時代の信仰を描いた小説『沈黙』。当時一部で禁書扱いされたが、いま世界から見直されている。求められる「母なる神」とは
作家・遠藤周作が、長崎を舞台に、キリスト教弾圧時代の信仰を描いた小説『沈黙』。刊行から50年、海外にも多大な影響を与え、この冬ハリウッドでの映画化も話題となっている。宗教の対立が世界を揺るがす現代、神の存在や信仰の在り方とは…。『沈黙』が描く日本特有の信仰の姿、潜伏キリシタンの祈りは、いま静かにやさしく語りかける。
【出演】ノートルダム清心女子大学教授…山根道公,【きき手】山田誠浩