70年目の告白または尊厳ということ

2017-08-07

 8月前半はテレビや新聞は戦争特集が盛んです。その中で70年過ぎてようやく過去のことを告白できたという番組(NHK ETV特集「告白」満蒙開拓団の女たち)がありました。戦前、旧満州に入植し、終戦後、集団自決寸前まで追い込まれた開拓団が、ソビエト兵に護衛してもらう代わりに、15人の未婚女性を差し出して犠牲にして助かったという話です。実際、その村は他の開拓村と異なり大部分のひとが日本に帰ることができました。生き残った女性は沈黙を守り、周囲の人々は目をつぶってきました。戦後70年が過ぎ女性は事実を公表して、すぐ死んでしまいます。長年にわたって心の底にあったことを告白して、ようやく安らかに死ぬことができたのでしょう。その人の過ごしてきた70年の年月を思いました。
 しかし、印象に残ったことは、それだけではありません。生き残った女性達の戦後は辛く差別もあり辛酸を極めたものであったようですが、充実した人生であったように思えます。生き残った人たちは、毅然とした表情をして、自分の人生に対して誇りを持ってるように思えます。どんなに苦しくともあの時の苦しさに比べればもののかずではなかったといいます。
 一旦は踏みにじらた人権が、ずっと踏みにじられたままであったわけではないことに心の安らぎを思えます。そして恥辱の意識や様々な困難にもかかわらず、もういちどやり直した女性達がいることをみて、人間の尊厳を見る思いがしました。
 この人たちのおかげで戦後の日本があるのだと思います。そして、知りながら敢えて目をつぶってきた周囲の人々とは、我々のことではないでしょうか(山森)。

以下はNHKの紹介文です
戦前、岐阜県の山間地から、旧満州(中国東北部)・陶頼昭に入植した650人の黒川開拓団。終戦直後、現地の住民からの襲撃に遭い、集団自決寸前まで追い込まれた。その時、開拓団が頼ったのは、侵攻してきたソビエト兵。彼らに護衛してもらうかわりに、15人の未婚女性がソ連兵らを接待した。戦後70年が過ぎ、打ち明けることがためらわれてきた事実を公表した当事者たち。その重い事実を残された人々はどう受け止めるのか。

2017年8月5日(土) 午後11時00分(60分)
2017年8月10日(木) 午前0時00分(60分)

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