親米改憲派の謎またはNHK「憲法と日本人~1949-64知られざる攻防」
以前から改憲論について腑に落ちないと思っていたことがある。一方において、現行憲法はアメリカ製なので自主憲法作る必要があると主張する改憲派が、他方において、親米(というか超親米)であることが多いということである。
例えば、現職総理大臣はその対論集において一方において「いまの憲法を全面的に見直すことなくしては、占領軍による付与のものである戦後体制を自ら変えることはできません」p78「現行憲法の前文は何回読んでも、敗戦国としての連合国に対する詫び証文でしかない」p85とまでいっているが、他方において、現職のアメリカ大統領とのきわめて親しい交友関係を強調して親米の態度を明らかにしている。
このアンバランスさについて、憲法記念日のNHKを見ていて少し謎がとけた。アメリカは一枚岩ではない。現行憲法に影響力をもったのはアメリカでもルーズベルトの系譜を引くニューディーラーたちである。これに対して、1949年中華人民共和国独立、1950年朝鮮戦争で、日本を反共の防波堤にしようとしていたもう一つの反共国家アメリカがある。このアメリカは憲法改正を日本に積極的に働きかけていた(1953年池田ロバートソン会談における池田の秘書官宮沢喜一のメモ)。いわれてみれば当たり前の話だ。
アメリカ製の憲法を忌避し自主憲法制定の制定を主張していた改憲派は、建前と異なりアメリカの意向を踏まえて改憲を唱えてきた(ロバートソン)。別に原因結果の因果関係があるとまで言わない。憲法改正を主張する論拠には様々な理由があるだろう。国民主権、基本的人権尊重、平和主義等に対する不信、嫌悪等多々あるだろう。ただ、現在のアメリカの意向に沿っていることは明らかである。
思うに、確かに、アメリカの意向に基づき日本の憲法を制定するというのは自主的とはいえない。しかし、アメリカの意向を汲んでまたは意向に沿って憲法を改正するというのも自主的とはいえないだろう。そのように考えてみると、誰の影響で作られた憲法であるか、誰の影響で変えるのか等を議論してもあまり意味がない。問題は中身である(山森)。
以下NHKの紹介文である
憲法と日本人
~1949-64 知られざる攻防~
2018年5月3日(木)
午後8時00分~8時49分
憲法施行から71年。“現在”と同じように憲法改正をめぐる国民的議論が交わされた時代が、これまでに“1度”だけあった。GHQが憲法制定についての公式報告書を刊行した1949年から、政府の「憲法調査会」が憲法改正を棚上げする報告書を提出した1964年までの15年間である。今回、NHKはこの間に交わされた憲法論議に関する様々な一次資料を大量に発掘した。そこから見えてきたものは何か――。
発掘した様々な一次資料や当事者たちの貴重な証言から、この15年間の憲法論議に「現在の論点」が凝縮されていることが明らかになってきた。現在と同じく、現行憲法が「押しつけ」か否かという議論を経て「9条」「自衛隊」をどう取り扱うかに収斂されていくのである。番組では、知られざる15年の攻防を多角的に検証し、憲法をめぐる日本人の模索を見つめていく。