藤沢で使用されている育鵬社教科書にはこんな問題が…⑬育鵬社採択に抗議(8月2日加筆)
藤沢市教育委員会が育鵬社版歴史・公民教科書を採択したことに抗議し、
採択のやり直しを求める
1 本年7月29日、藤沢市教育委員会は、市立中学校で2016年度から4年間使
用する歴史及び公民教科書に育鵬社版教科書を採択した。
2 育鵬社版の歴史教科書は、「自虐史観」からの脱却を唱え、日本の引き起こした
アジア太平洋戦争がアジア諸国の独立につながったと教え、日本の加害責任につい
ては曖昧な記述にとどまっている。また、同公民教科書は、国民主権よりも天皇の
役割を情緒的に強調し、基本的人権よりもその制約を強調し、日本国憲法及び平和
主義が連合国から押し付けられたもので「改正」すべきものであるかのように教え、
国際紛争の平和的な解決よりも自衛隊を海外に派遣する必要性を強調する内容とな
っている。
3 このような育鵬社版の歴史・公民教科書に対しては、その歴史観憲法観があまり
にも一面的で教育基本法や学習指導要領に照らしても問題があるとして、多数の有
識者や市民がその採択に反対の声をあげてきた。また自由法曹団(神奈川支部)は
本年7月14日藤沢市教育委員会に対し、育鵬社版教科書を採択しないことを詳細
な意見書を添え請願した。藤沢市は、前回2011年も育鵬社版歴史・公民教科書
を採択したが、これに対しても市民から強く批判がなされ、自由法曹団も抗議を行
った。今回の採択は、かかる批判・反対・意見を無視して行われたものであり、遺
憾である。
4 藤沢市立中学校19校から提出された「教科用図書調査書」において各社に付さ
れた丸印の数を集計すると、第1位東京書籍の歴史68個、公民86個に対し、育
鵬社は歴史3個、公民5個という低評価であった。この低評価は育鵬社を3年強実
際に使用した上のものであり、現場教員は育鵬社の欠陥を十分把握した上でその継
続使用を強く拒絶していることが明白である。それにもかかわらず、本年7月29
日の教育委員会では、現場教員の意見は顧みられることなく、育鵬社については編
修趣意書等の受け売りの表層的な賛成意見が出されたのみで、育鵬社採択の決定が
なされている。かかる採択は現場教員をないがしろにするとともに、あまりに一面
的な教科書の使用により生徒が受ける様々な不利益を無視するものであって、藤沢
市の教育に禍根を残すことが明白である。
5 われわれ自由法曹団は、藤沢市教育委員会の今回の歴史・公民教科書の採択に対
し抗議するとともに、同教育委員会に対し、改めて採択をやり直し、育鵬社版教科
書を採択しないよう求めるものである。
2015年7月30日
自 由 法 曹 団
団 長 荒 井 新 二
自 由 法 曹 団 神 奈 川 支 部
支部長 森 卓 爾
自由法曹団のホームページはこちら
「自由法曹団ホームページ」
※2015年8月2日加筆(
上記の自由法曹団の声明4のところを少し補足したいと思います。
藤沢市教育委員会は,今回の教科書採択に際し,市立中学校19校から学校長名で「教科用図書調査書」を提出させています。
この「教科用図書調査書」とは,対象教科書につきある観点で適切な場合○を付ける形式のもので,社会科は地理,歴史,公民とも9観点×19校で最大限171○が付くことになります。
教育委員会は通常実際に教科書を使う現場の先生方の意見を尊重するわけで,実際今回の教科書採択でも,国語地理は調査書で最高得点のものが採択されました。書写は2位(46点)のものが採択されましたが,1位(53点)との差は少ないものでした。
ところが,歴史,公民では…
「みんなの教育・ふじさわネット」の集計によればにおいて各社に付された丸印の数は、第1位東京書籍の歴史68個、公民86個に対し、育鵬社は歴史3個、公民5個という低評価であったとのことです。
この低評価は,教育現場において,育鵬社の教科書に対する理解が進んでいないため,などというものではありません。
藤沢市では前回採択以降の3年強,育鵬社の歴史,公民教科書が実際に使用され,この低評価は,現場の先生方が育鵬社を3年強実際に使用した上のものということになります。
すなわち、現場の先生方は育鵬社の欠陥を十分把握した上でその継続使用を強く拒んだものといえます。
ところが,先月29日の教育委員会における育鵬社に対する意見は,内容的には,育鵬社の「編修趣意書」(いわば育鵬社のキャッチコピー)の受け売りや,人物数(先日のブログ⑩で問題点を指摘しております)といったもので,現場の先生方に対する説得力があるものとは思えませんでした。現場の先生方の拒絶を無視して,一部教育委員の趣味(?)を述べたようにしか聞こえませんでした。
今回の採択は,前回の採択とは意味が全く異なります。
いわば現場の先生方が故障の多い車を交換してくれと悲鳴を上げているのに,色が素敵だから乗り続けなさいと言い放ったようなものです。
このような育鵬社の採択は,現場の先生方の教育委員会に対する不信感を呼び起こすに違いありません。
たとえばいじめ問題への対応一つとっても,現場の先生方と教育委員会の間の良い意味での信頼関係は不可欠です。
このままでは,藤沢市の教育に回復困難な禍根を残すことになると思います。
藤沢市教育委員会において,未だ採択変更は可能なのですから,育鵬社の採択を是非見直すべきと考えます。(小池)