遺言書のこと。
相談者の方とお話ししているときに、「これは将来トラブルが起きるかもしれないな」と感じることがあります。
そういうときは、可能な限りトラブルを回避する方法もアドバイスさせていただくようにしているのですが、トラブル回避の方法が「遺言書の作成」である場合、多くの方は「うちにそんな財産はないから大丈夫」とおっしゃいます。
しかし、司法統計によれば、平成23年度に認容ないし調停成立した遺産分割事件(「分割をしない」を除く)全7892件のうち、遺産の価額が1000万円以下のものは2470件(31.3%)、5000万円以下のものは3571件(45.2%)、あわせて6041件(76.5%)となっています。
現在、相続税の基礎控除は5000万円ですから、これらの事件の当事者は相続税の課税対象ではありません。
それでも、遺産分割で揉めているのです。
さらに注目していただきたいのは、遺産の価額1000万円以下のうち1349件(54.6%)、5000万円以下のうち2383件(66.7%)で「代償金」を支払う旨の定めがされていることです。
つまり、半分以上のケースにおいて、分割の結果生じた過不足を金銭の支払いで調整しているのです。
この中には、換価分割(遺産を売却して得た金銭を分ける方法)は含まれていません。
つまり、売却できない/しない遺産(土地・建物など)を相続した人が、他の相続人に支払う金銭を自分の預貯金や借入金などで工面しているということなのです。
はたしてそれが、亡くなった方の遺志だったのでしょうか…?
たしかに、遺言書は万能ではありませんし、ちょっと大げさな感じもします。
けれど、遺言書さえあれば軽減できたのに!というトラブルは少なくありません。
遺言書は自分で作成することもできますから、この機会に筆をとってみてはいかがでしょうか。
詳しい遺言書の作成方法は、また後程。
(川本)