特定秘密保護法またはNHK日曜討論のこと
日曜日ぼんやり寝ぼけまなこでテレビを聞いていたら特定秘密保護法について議論していました(NHK日曜討論2013年11月3日)。特定秘密保護法の問題点が少し具体的にわかりましたので、覚えている範囲で紹介します。
1秘密とは
秘密保護の対象となるものは別表で示し、防衛 外交 特定有害活動の防止 テロリズムの防止を保護するといいます。
しかし、範囲が明確でなく曖昧です。具体例を示しましょう。別表は
防衛に関し、「防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報」
外交に関し、「外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの」、テロリズムに関し、「テロリズムの防止に関し収集した外国の政府又は国際機関からの情報その他の重要な情報」、とあります。ここでいう「その他の重要な情報」では範囲が明確ではありません。内容では範囲を絞っているとは思えせん。行政府の長が重要な情報であると思えば秘密になるというのでは絞ったことになりません。
この点、与党はその範囲の一般的基準を第三者の有識者会議で決めるようにするから大丈夫であるといいます。
しかし、仮に妥当な一般的基準を有識者会議で決めたとしても、秘密を指定するのは、行政府の長です。事後、本当に有識者会議の規準を守っているのかチェックの方法がありません。やはり、秘密の範囲が不明確になる恐れがあるといわざるを得ないと思います。
2 誰が秘密であると認定するか。
法案は行政機関の長が特定秘密として指定するものとする、として、行政機関の長に秘密の指定権を与えています。
要するに行政府が決める体制です。行政府にとって不都合なことを隠されてしまう可能性があります。
例えば、現在、日本は特定秘密保護法とセットで日本は国家安全保障会議を作ろうとしています。これはアメリカの国家安全保障局(NSC)の日本版です。そして、NSCは、現在、日本を含む世界各国への盗聴活動で大いに批判されています。同盟国の首相(メルケルなど)に対しても盗聴するような活動をしています。このような活動を日本版NSCがした場合、やはり、「その他の重要な情報」として秘匿されてしまう可能性は否定できません。
この点、野党は指定権を第三者機関にゆだねるべきと批判しています。しかし、与党は第三者機関では秘密漏洩の可能性があるとして消極的です。
そうすると依然として行政機関の長の判断が恣意的になってしまう可能性が残ることになります。秘密の認定権を行政権にゆだねているのは不適当であると思います。
3 秘密の指定の更新
秘密は、行政機関の長が更新することができます。さらに、30年経過すると内閣の承認があると更新できてしまいます。
しかし、そうすると、何が秘密か政府が勝手に決めて、それをずっと継続することができることになります。
その点で、(日本政府が何かと例に出す)アメリカは、大統領令で10年で原則公開です。最長35年までですが、それ以上は公開です。しかも、情報観察局が秘密指定が適切かチェックして、その長は秘密指定解除権を持っています。アメリカの法制をまねているのであるならば、情報公開も真似てほしいです。
仮に、秘密にする必要があったとしても、ずっと秘密であることがことができる可能であるのは不適切です。アメリカのように原則10年で公開にすべきです。
4 知る権利取材の自由配慮、正当な業務の文言がある。
法案は「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」。「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」としています。与党公明党はこの条文をいれることに尽力したのだといいます。
しかし、知る権利は恩恵ではありません。国民の基本的人権です。また、訓示規定にすぎず、これに違反する行政府の行為があったときどうやってチェックしたらいいのでしょう。知る権利・取材する自由を配慮する条文があってもその違反を取り締まる規定がないと実効性は確保できません。
例えば、「著しく不当な方法」であるかどうかを認定するのは行政府です。どうして恣意的な認定がないといえるのでしょう。私には、外務省機密漏えい事件において記者と女性事務官との関係を著しく不当な取材行為といって断罪されたことを忘れることができません。政府が密約はないといって嘘の説明をし続けたことの方が国政においてはるかに重大な問題であると思います。少なくとも、等閑視されるべき問題ではありません。今日、森雅子国務大臣は、「著しく不当な方法」について、「西山事件の判例に匹敵するような行為であると考えている」としているようです(新聞報道)。そうすると、外務省機密漏えい事件のようなことが再度あるとするならば、取材方法の問題性についてのみ議論され、密約については闇から闇に葬り去られることになりかねません。
5 懲役10年を規定しています。
与党はアメリカの法制を参考にしたそうです。
法定刑が懲役10年ということになると、執行猶予を付けにくくなります。威嚇的な効果が大きく、表見活動を委縮させるものです。アメリカの法制を参考にするならば、同時に上記のような大統領令についても、参考にすべきでしょう。
その他、立法との関係、司法府との関係についても議論がありました。
与党側は中谷元元防衛庁長官と公明党の議員でした。
与党の説明は不十分で説得力を感じませんでした。誰が聞いも同じ印象であったと思います(山森)。