いじめ重大事態調査委員となる方のために(連載記事・一応完結)
はじめに
2013(平成25)年9月28日にいじめ防止対策推進法(以下単に「法」「同法」ということがあります。)が施行され,各自治体により同法関連の調査も相当数行われてきました。
しかしながら,同法やこれに基づく国の基本方針では,調査委員がどのような調査・判断をすべきか明確に書かれているわけではありません。
2011年の大津中学生いじめ自死事件等を踏まえ法が制定され重大事態調査が制度化されたことを踏まえれば,重大事態調査を事案解明と再発防止に資する有意義なものとすることは,こうした事件を防げなかった大人の責務というべきでしょう。
この小冊子は,私の調査委員としての経験に基づき,同法関連の調査委員となった方が,有意義な調査を実際に行えるようにする一助として書いたものです。また,調査に関与する教育委員会事務局の方の役に立つかもしれません。さらに,結果として,重大事態を起こさないための留意点を論じているので,学校の役に立つかもしれません。
理論的根拠や法的根拠には乏しいですが,ご容赦ください。
また,誤り等ありましたら,ご指摘いただければ幸いです。
新たに気づいたことなど,随時改訂していきたいと思います。(小池)
※2025年2月改訂しました。まとめて読みたい方はこちらのPDF版からどうぞ。
記事には下の目次からもとべます。
第1 しくみ
1 「いじめ」、重大事態調査に関するルール
(1)いじめ防止対策推進法
(2)いじめの防止等のための基本的な方針(法第11条)
(3)地方いじめ防止基本方針(法第12条)
(4)学校いじめ防止基本方針(法第13条)
(5)いじめの重大事態の調査に関するガイドライン(文部科学省)
(6)子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(同)
2 法が設置を予定する組織
(1)学校に設置される組織
(2)教育委員会の附属機関
(3)長の附属機関(法第30条第2項)
(4)いじめ問題対策連絡協議会(法第14条第1項)
3 法の予定する調査
(1)一般
(2)重大事態
第2 調査の前段階
1 調査のための組織
(1)自治体の規模による差異
(2)教育委員会と学校のいずれの下に設置されるか
2 文書の保管について
第3 調査の開始にあたって
1 調査の開始
(1)疑いがあれば重大事態
(2)重大事態の意味
2 何のために調査をするのか?
(1)重大事態に対処・同種の事態の発生の防止
(2)せめて何があったか知りたい
(3)大津いじめ自死事件
(4)立法趣旨
(5)真相解明も含まれる
3 調査委員会の構成
4 保護者が調査を希望しない場合
5 再調査機関による並行調査
6 会合の場所
7 調査方針の確認
第4 調査の実施
1 何を調査すべきか
2 調査方法
(1)出発点
(2)原典確認
(3)基本的文書の確認
(4)独自調査の方針
(5)誰が聴き取りを行うか
(6)個別聴取
(7)聴取の手順
(8)児童生徒聴取の留意点
(9)児童生徒からの聴取事項
(10)教員聴取の留意点
(11)教員の発言の尋ね方
第5 認定と判断
1 事実認定
(1)「行為」の認定
(2)「苦痛」の認定
2 「いじめ」の認定
(1)「そんなのは、いじめではない」
(2)「そんなに広く認められたら学校はやってられない」
(3)「気にしすぎ」「この子も悪いところがある」
(4)「モンスターペアレントだから」
3 重大事態に至った原因の認定
(1)原因解明の必要性
(2)どのようにして解明するか
(3)一見偶発的突発的にみえても
(4)留意点
4 「いじめ」と重大事態との因果関係の認定
(1)問題点
(2)再発防止のための調査
5 「いじめ」対処過程の認定
6 学校の対応の問題点(総論)
(1)結果論
(2)不可避は不可
(3)留意点
7 よくある問題点
(1)概観
(2)「いじめ」の正当化
(3)多対一状態
(4)やられたらやり返す
(5)問題の切り分け
(6)「いじめ」の事実が認められないとして何もしない
(7)「どうしたいの?」の落とし穴
(8)謝罪の落とし穴
(9)専門家の意見の扱い
(10)児童生徒やその保護者の意見の扱い
8 再発防止策
第6 報告書とりまとめ
1 何を書くか
2 作成作業の分担
(1)資料を明記
(2)事務局への依頼
3 保護者等への中間報告
第7 提出・記者会見
1 提出
2 首長への報告
3 保護者への交付
4 公表・記者会見
第8 記録保管
第9 再調査
1 長の再調査とは何をするのか
2 調査委員会の追加調査
3 県知事による再調査の受託
第10 情報源
1 基本方針等
2 書籍
3 ネット情報
(1)総合情報
(2)調査報告書
おわりに