いじめ重大事態調査委員となる方のために(連載記事・一応完結)

2022-06-19

はじめに

2013(平成25)年9月28日にいじめ防止対策推進法(以下単に「法」「同法」ということがあります。)が施行され,各自治体により同法関連の調査も相当数行われてきました。

しかしながら,同法やこれに基づく国の基本方針では,調査委員がどのような調査・判断をすべきか明確に書かれているわけではありません。

2011年の大津中学生いじめ自死事件等を踏まえ法が制定され重大事態調査が制度化されたことを踏まえれば,重大事態調査を事案解明と再発防止に資する有意義なものとすることは,こうした事件を防げなかった大人の責務というべきでしょう。

この小冊子は,私の調査委員としての経験に基づき,同法関連の調査委員となった方が,有意義な調査を実際に行えるようにする一助として書いたものです。また,調査に関与する教育委員会事務局の方の役に立つかもしれません。さらに,結果として,重大事態を起こさないための留意点を論じているので,学校の役に立つかもしれません。

理論的根拠や法的根拠には乏しいですが,ご容赦ください。

また,誤り等ありましたら,ご指摘いただければ幸いです。

新たに気づいたことなど,随時改訂していきたいと思います。(小池)

※下の目次から該当記事へとべます。カテゴリー内で前から順に表示されるよう,公開日時は意図的に後の方を古くしています。まとめて読みたい方はこちらのPDF版からもどうぞ。

目次
第1 しくみ
1 「いじめ」,重大事態調査に関するルール
2 法が設置を予定する組織
3 法の予定する調査


第2 調査の前段階
1 調査のための組織
(1)自治体の規模による差異
(2)教育委員会と学校のいずれの下に設置されるか
2 文書の保管について


第3 調査の開始にあたって
1 調査の開始
(1)疑いがあれば重大事態

(2)重大事態の意味
2 何のために調査をするのか
(1)重大事態に対処・同種の事態の発生の防止
(2)せめて何があったか知りたい
(3)大津いじめ自死事件
(4)立法趣旨
(5)真相解明も含まれる

3 調査委員会の構成
4 保護者が調査を希望しない場合
5 再調査機関による並行調査
6 会合の場所
7 調査方針の確認


第4 調査の実施
1 何を調査すべきか
2 調査方法
(1)出発点
(2)原典確認
(3)基本的文書の確認

(4)独自調査の方針
(5)誰が聴き取りを行うか
(6)個別聴取
(7)聴取方法
(8)聴取の手順


第5 判断
1 事実認定
(1)「行為」の認定 
                                                         ア 問題点                                                          イ 判決ほどの厳格さは不要                                                ウ 関係児童生徒側の否認                                                 エ 周囲の児童生徒は中立の第三者か                                               オ 事実が膨大な場合
(2)事案の全体像
(3)「苦痛」の認定
2 「いじめ」の認定                                                  (1)「そんなのは,いじめではない」                                            (2)「そんなに広く認められたら」                                       (3)「気にしすぎ」「この子も悪いところがある」                                     (4)「モンスターペアレントだから」
3 学校の対応の問題点総論
(1)結果論                                                 (2)不可避は不可
(3)留意点

4 よくある問題点                                                    (1)典型例                                                             (2)「いじめ」の正当化                                                                         (3)多対一状態                                           (4)やられたらやり返す                                      (5)問題の切り分け                                        (6)「いじめ」の事実が認められないとして何もしない                                             
5 再発防止策


第6 報告書とりまとめ
1 何を書くか

2 作成作業の分担
(1)証拠を明記
(2)事務局への依頼

3 保護者等への中間報告

第7 提出・記者会見
1 提出
2 首長への報告
3 保護者への交付
4 公表・記者会見
(1)神奈川県
(2)横浜市


第8 記録保管


第9 再調査
1 長による再調査とは何をするのか
2 調査委員会による追加調査


第10 情報源
1 基本方針等
2 書籍
3 ネット情報
(1)総合情報
(2)調査報告書

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