戦前の日本と戦後の日本は、断絶しているか・連続しているか。

2014-09-28

朝日新聞の従軍慰安婦報道に対する一連の批判とこれに対する反批判の言動の中でなるほどと思ったのは在米の評論家冷泉彰彦の議論である。冷泉はニューズウイーク日本語版9月18日(http://www.newsweekjapan.jp/reizei/)に「朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解」という小論を書いている。冷泉は日本はポツダム宣言を受諾して、戦前戦中の旧日本と決別して新生日本になったはずである。にもかかわらず、戦前戦中の旧日本を悪行を擁護することは、新生日本は実は旧日本の延長線上にあるという批判を招きかねないとしている。
 時の総理大臣や朝日廃刊を主張する論者は、戦前戦中の日本と戦後の日本を連続的にとらえているように思える。そして、ポツダム宣言を受諾して旧日本と決別した新生日本を否定したいように思える。他方、朝日や朝日を擁護する論者は戦前と戦後の日本を断絶したものととらえ、ポツダム宣言を受諾した新生日本は旧日本と全く別物と考えている。 そのような考え方の違いのもとでの対立の図式と考えると解りやすい。
 前者はポツダム宣言受諾の効果をどう説明するか、困難だろう。後者は国際法に合致しているが、どうも、外在的な批判のようで、胸に響かない。
 個人的には、後者の立場で(新生日本は旧日本と法的に断絶している)、従って、従軍慰安婦を抱えた日本軍の実態を批判的に報道することは新生日本の名誉を傷つけない。ただ、事実的には新生日本と旧日本は連続性がある、としてとらえたい。事実的に連続しているという意識があるからこそ、このような議論になるのだろう。このように考えるとポツダム宣言を受諾した意味を、また、戦後とは何か考え直したい(山森)。

ポツダム宣言抜粋 (国会図書館データベースfttp://www.ndl.go.jp/constitution/etc/j06.html)
四、無分別ナル打算ニ依リ日本帝国ヲ滅亡ノ淵ニ陥レタル我儘ナル軍国主義的助言者ニ依リ日本国カ引続キ統御セラルヘキカ又ハ理性ノ経路ヲ日本国カ履ムヘキカヲ日本国カ決意スヘキ時期ハ到来セリ
五、吾等ノ条件ハ左ノ如シ
吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ右ニ代ル条件存在セス吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ス
六、吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス

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