イソ弁→ノキ弁→ケン弁??
「ANAのCAスクール開講 受講料は30万円」(朝日新聞デジタル10月2日(水)7時8分配信)
【上栗崇】客室乗務員(CA)を目指す大学生に、現役のCAが接客や立ち居振る舞いを教える「ANAエアラインスクール」が1日開講し、18人があいさつについて学ぶ最初の授業に臨んだ。ANAホールディングスが新設し、68人が入学した。ANAが一般の学生向けの学校を開くのは初めて。
初級と上級があり、各3カ月間で受講料は約30万円。成績は直接ANAへの採用に結びつかず、ホテルなど接客業全般の就職活動の下準備という位置づけだが、「採用試験で役立つ授業も多いので、有利な面はあるはず」(広報)としている。
うがちすぎた見方かもしれませんが,
1 本来なら採用後賃金を払って研修させる内容を,採用前に受講料を取って教える
2 しかも,採用試験で…有利な面,などといわれると,採用試験を受ける人は受講せざるをえない気分になる
3 さらに,一発勝負の採用試験ではなく,継続的に適性を判断することができる
4 おまけに,受講料自体も結構いいお値段かも
ということで,労働事件を扱う弁護士としては,ちょっと引っ掛かりを感じました。
と同時に,こんなことも考えてしまいました。
独立開業を目指す弁護士に,弁護士業務,事務所経営の基礎を教える「弁護士セミナー」を●●法律事務所が開講。
受講料は1年間で120万円。
独立開業の準備という位置づけだが,「当事務所での業務に直接役立つので,採用時に有利な面はあるはず」(広報)。
採用希望者には受講料は貸付可能,採用後に報酬から天引きによる分割払い。
少し前までは,新人弁護士は雇ってもらって給料をもらえた居候弁護士=「イソ弁」が主流だったはずです。
ところが昨今では,新人弁護士に事務所の机は提供する=軒を貸すだけで給料は出さず,独自に稼いで経費を入れてもらう「ノキ弁」も増えているようです。
これがさらに進むと,研修名目で入所させ,給料も与えず独自の稼ぎも認めずに高額の受講料だけとるような事務所も現れるのかもしれません。
研修弁護士=「ケン弁」とでもいうのでしょうか。
いきなり自分一人で独立するのは不安が多いでしょうから,お金を払ってでも研修を受けようとする人が出ても不思議ではありません。
そうして,法科大学院の奨学金,司法修習段階での借金に加えて,独立時には研修で生じた多額の借金を背負うことになったり,あるいは借金が故にその事務所に縛りつけられたり(独立したら一括返済,採用されたら分割可という条件をつけて,安くこき使う),などという事態が生じたりして…。
私の妄想であることを祈るばかりです(小池)。