(6)「いじめ」の事実が認められないとして何もしない

2024-01-27


 ア 可能な指導はある
 上記1(1)イ(ア)で述べたことを繰り返しますが、「いじめ」「行為」の存在を前提に関係児童生徒に対し厳しく指導する場合には、厳格な立証が必要ともいえますし、さらに「行為」を否定する児童生徒に対して「うそをついてはいけない」と厳しく指導する場合には、さらに厳格な立証が必要ともいえます。
 しかし、「いじめ」の指導はそうしたものばかりではないでしょう。
 関係児童生徒に対しても、上記のような指導の他、一定の「行為」を前提に「君はそういうけれども、人からはこう見える」「こういう行為があったとしたら、そういうことはしてはいけない」「今回は君とは違うとしても、そういうことはあってはならないよね」といった指導もありえます。
 また、一定の「行為」を前提とせずに「最近対象生徒の元気がないけれども、君は何か知っているか」とか、対象児童生徒の名前すら出さずに「君最近どう?何か嫌なことはないか?」という形で働きかける指導もありえます。
 さらに、関係児童生徒への直接の指導以外に、その保護者への働きかけもありえますし、学級集団全体に指導するとか、周囲の児童生徒の聴き取り・指導等もありえます。
 加えて、席替え班替え等、外的条件を変更することもありえます。
 要するに、関係児童生徒に対し厳しく指導するほどには「いじめ」の事実が立証できていない場合であっても、「いじめ」が存在する可能性があれば、できる指導はあるし、しなければならない指導というのはあるということになります。

イ 対象児童生徒への支援
 そして、仮に関係児童生徒への諸々の指導や働きかけに仮に困難があったとしても、対象児童生徒の見守りや支援、その保護者への働きかけは欠いてはならないところです。
 対象児童生徒側からは、通常は「いじめ」の存在を前提とした指導を要望されるところではあると思いますが、これについてはできないことについては何故できないのかを説明した上で、可能な指導、支援については率先して行い報告していくという姿勢があるべきと思います。

ウ 「見捨てられ感」がカギでは?
 文部科学省によれば、2023年度における小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は73万2568件(2019年度61万2496件)、重大事態発生件数は1306件(2019年度723件)とされています。
https://www.mext.go.jp/content/20241031-mxt_jidou02-100002753_2_2.pdf
 統計上「いじめ」が重大事態に至る可能性は0.18%程度ということになります。
 これは学校現場において、「いじめ」対応の99.82%が適切であることを意味するともいえますが、直感的にはおそらく学校現場はそこまで完璧ではないと思われます。
 私の思うに、「いじめ」対応に多少の問題があったとしても、学校が何かは取り組んでいて、対象児童生徒側で「見捨てられてはいない」と感じることができているから、破局には至っていないのではないかと思います。(そして、そのための学校現場の努力には、敬意を表するばかりです。)
 逆にいえば、私が目にしてきた重大事態調査事案は、どこかの場面で対象児童生徒側が「見捨てられ感」をもつに至っているように思われ、しかもそれは「いじめ」が行われていた時期ではなかったりします。
 完璧でなくてもよいから、寄り添い続ける姿勢が必要と思います。

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