(4)「モンスターペアレントだから」
「いじめ重大事態調査委員(いわゆる第三者委員)となる方のために」の連載記事です。目次とあわせ,お目通しください。(小池)
(4)「モンスターペアレントだから」
いわゆる「モンスターペアレント」対応に,学校,教育委員会が苦慮する事案が存在することは事実でしょう。
しかし,「モンスターペアレント」事案であったとしても,調査委員会の判断が左右されてはならないと思います。
特に次の点に留意する必要があると思います。
ア 誰でも「モンスターペアレント」になりうる
愛しい我が子が自死してしまったら,不登校となり「死にたい」とつぶやく日々を送っていたら…,私は「モンスターペアレント」になるでしょう(うちの子の在籍校からは既に「モンスターペアレント」と思われているかもしれませんが)。
重大事態調査が行われるような事案では,誰でも(あなたも)「モンスターペアレント」になりえます。
イ 「モンスターペアレント」側に一片の理もないことはまずない
「モンスターペアレント」側に一片の理もないことはまずなく,その理すら否定すると,「モンスターペアレント」側は当然強硬になり,学校・教委側は理に反する状態にますますはまりこんでいくことになります。
「モンスターペアレント」側の理は受け入れ,理に基づく結論は容認した上で,理からは導けないことについては教育論,裁量論で対応し,よくない点については率直に指摘するという,いわばミソとクソを一緒にしない対応が求められると思います。
ウ 「モンスターペアレント」は子どもの責任ではない
仮に親が「モンスターペアレント」であったとしても,子どもにその責任はありません。
分け隔てなく子どもの話は受け止め,対応する必要があります。
エ 学校が作ってしまった「モンスターペアレント」もある
元々は「モンスターペアレント」的な行動をとっていなかった保護者に対し,学校が誤った対応をとったため,「モンスターペアレント」的行動が始まってしまったこともままあるようです。
オ 「モンスターペアレント」とみられることを恐れる保護者もいる
「モンスターペアレント」とみられることを保護者が恐れ,担任への連絡,要望が後手にまわってしまった事案もあるようです。
カ 存在は当然の前提
誰かの民事責任を追及する訴訟では,当該児童生徒の保護者に「モンスターペアレント」的行動があれば,それを根拠に過失が否定されあるいは過失相殺の対象とするのが衡平の原理にかなうとことはあるかもしれません。
しかしながら,重大事態調査は誰かの民事責任を追及するものではなく「いじめ」による児童生徒の被害を防ぐことを旨とする以上,別の考え方をとるべきです。
今日において,「モンスターペアレント」的保護者が,ある程度存在することは,当然の前提とせざるをえないでしょう。
したがって,学校においては,そうした保護者の存在を前提に,「いじめ」防止対策や「いじめ」への対応を行うべきですし,ましてや保護者の「モンスターペアレント」的行動により児童生徒の指導がおかしなことになっては困ります。
そして,「モンスターペアレント」的保護者が存在することは当然である以上,調査委員会としても,「モンスターペアレントだから」ということを免罪符としてはならないと思います。