第9 再調査

2024-02-03


1 長の再調査とは何をするのか
 長の再調査とは何をするのか、法第28条の調査以上に問題があると思います。
 たしかに、法第30条第2項の文言は「当該報告に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるとき」に調査を行うことができるとするもので、目的は法第28条第1項と同じといえます。
 その一方で、法第28条第1項の調査が「当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査」とされているのに対し、法第30条第2項は「第28条第1項の規定による調査の結果について調査」とされています。
 この点について小西議員は、著書218頁で「再調査の内容及び権限」として次のように述べており、参考になると思います。
 本条の再調査については、第4項において、「地方公共団体の長に対し、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第二十三条に規定する事務を管理し、又は執行する権限を与えるものと解釈してはならない」とされ、地方公共団体の長と教育委員会や学校との間における法律上の権限分配について、新たな立法措置を講じないものとしています。これは特に、教育委員会制度の制度趣旨(政治的中立性等)について、本法では何らの特例措置を講じないとの立法意思によるものとされています。
 したがって、新たな権限の分配の特例がない以上、本条の附属機関等による再調査においては、教育行政に踏み込んだ調査(それに伴う権限行使を含む)を行うことはできません。具体的には、第28条組織による調査における①事実関係の認定やその評価の適否、②再発防止策の内容の適否まで調査を行うこと等はできないと解せざるを得ないものと考えられます。
 ただし、「調査の結果についての調査」はできるとされている以上、第28条組織の構成員についてその独立性、公平公正性、専門性等を客観的に検討すること、提出された報告書の内容について説明を受けること、(任意の協力による)関係者のヒアリングの実施や資料提供を受けること、これらを踏まえて、教育委員会等に(あくまで事実行為として)必要と考えられる措置について助言等を行うことは、実質的に第4項の趣旨に抵触しない態様である限りでき得るものと解されます。
 国の基本方針は国の基本方針は公立学校については言及せず、
国立学校・私立学校について、法により、文部科学大臣・都道府県知事に新たな権限が付与されるものではないが、文部科学大臣・都道府県知事は、当該事案に係る資料の提供等を求め、資料の精査や分析を改めて行うこと等が考えられる。
としており、小西議員と同旨といいうるのですが、某市の推薦依頼や、某市の再調査実施要項では、小西議員に「できない」と明言されていることがバンバン出てきます。
 なお、前述(第3の5)の並行調査については、第28条第1項の調査について長が報告を受けるまでは第30条第4項の縛りはかからない=上記引用のような制限はないというのが小西議員の解釈ですが(著書221頁)、これについてはちょっと疑問です。

2 調査委員会の追加調査
 上記のとおり再調査には制約があると考えられること、また、再調査委員会を立ち上げたり調査を開始することが大変なことから、調査に問題がある場合に、調査委員会の追加調査という形で問題に対応する場合があります。
 法令上の制度ではありませんが、事実上広く行われているようで、県内でも複数の例が認められます。
https://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/res/projects/default_project/_page/001/021/695/1219kouhyouban.pdf

3 県知事による再調査の受託
 2015年11月の取手市中学生自死については、同市教育委員会が「いじめ」重大事態に該当しないとの違法な決議を行う等の経過から、茨城県知事が取手市長より再調査(並行調査)を受託(地方自治法第252条の14)し、知事の下に設置された調査委員会による調査がなされました(再発防止策を除く)。

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