意気に感ず、または「国谷さんはNHKの宝だ」

2016-02-11

脳腫瘍で亡くなった歌手丸山夏鈴のことが心に残っていたところ、小田原で新幹線から降りて帰るときに待合室のテレビでクローズアップ現代が放映されていた。番組の内容が「がんを生きる 残された時間をどう生きる」である。思わず惹きつけられてみた。死を直前にした研究者や30歳で亡くなった家庭の主婦の生き方に感銘を受けた。
 ただ、ゲスト樹木希林の言葉がもっと心に残った。ゲストも同じくがんで闘病生活をおくっている。撮り直しのきかない生放送で番組最後に「私ね、国谷さんは本当に素敵な仕事ぶりだと思っているの。NHKは大変な財産をお持ちだなと思って、私はいつも大好きな番組です」と言った。思わずぎょとした。しかし、全く同感である。ずっとクローズアップ現代をみていたがキャスターの魅力が大きい。降板は残念としかいいようない。同じように考えている人がいて、しかも、堂々と番組の中でそのことを公言するとは。人生意気に感じる話である。
 覚えず、米原万里のことを思い出した。元外務省職員で現在作家の佐藤優が東京地検に逮捕される寸前、報道陣から追いかけられていたところ、米原は食事をしないかと佐藤を誘った。世間の批判から佐藤を守るため自分が防波堤になろうとしたのである。これもまた意気に感じる話である(山森)。

以下、番組の紹介である。
2016年2月9日(火)放送
がんを“生ききる”~残された時間 どう選択~
出演者
樹木 希林 さん
(女優)
今年1月にがんで亡くなった研究者・澤昭裕さんの選択が話題を呼んでいる。終末期において、最後の原稿を仕上げることを決意。医師や妻と治療方針を詳細に詰め、意識をなるべく明朗に保つために敢えて緩和ケアを抑制し、完成2日後に亡くなった。同様に、アルバム発表直後に亡くなったロックスター、デビッド・ボウイや、残される一人娘のためにみそ汁の作り方を伝えた母親など、それぞれのやり方で自分の最期を“生ききった”人々に改めて関心が集まっている。医療技術の進歩で治療の選択肢が広がり、患者自身が自らの命(時間)の使い方を主体的にマネジメント出来るようになる中で、「闘病」に対する意識が変わりつつあるのだ。国の最新の意識調査では、末期がんになった場合、「治療優先の医療」ではなく「生活や私欲を優先した医療」を選択するという回答が7割を超えた。国は新たに「QOD(死の質)」という概念を定義し、「自分らしい最期」をサポートする制度改革に舵を切り始めた。人生を最期まで豊かに過ごすとはどういうことか。自らもがんを公表している樹木希林さんをゲストに迎え、考える。

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