頭髪指導-徹底は無理

2021-02-20

茶色っぽい髪を黒く染めるよう教諭らに強要されて不登校になったとして、大阪府羽曳野市の府立懐風館高校の元女子生徒(21)が、府に約220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、大阪地裁であった。横田典子裁判長は元生徒側の訴えを一部認め、府に33万円の支払いを命じた。髪の染色などを禁じる校則は「学校の裁量権の範囲内」との判断を示す一方で、不登校後の学校側の対応を違法と認定した。(以上,日本経済新聞2021年2月16日)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOHC10AFC0Q1A210C2000000/

頭髪指導自体の是非についてはここではおいておき,一点指摘しておきたいと思う。それは,頭髪指導の徹底は,通常は無理ということである。

いわゆる「おとなしい」学校,「おとなしい」生徒であれば,頭髪について校則があったりちょっとした指導があれば,これを守るだろう。

しかし,そうではない学校,そうではない生徒であれば,おいそれとはいくまい。様々な手段で指導することになったりする。

それでも指導に応じなかったら…

退学のない公立小中学校では,出席停止ぐらいしかないが,出席停止の要件は学校教育法第35条で

一 他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為
二 職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為
三 施設又は設備を損壊する行為
四 授業その他の教育活動の実施を妨げる行為

とされており,人に迷惑のかからない頭髪では,出席停止は無理であろう。

退学がある学校でも,退学の要件は学校教育法施行規則第26条で

一 性行不良で改善の見込がないと認められる者
二 学力劣等で成業の見込がないと認められる者
三 正当の理由がなくて出席常でない者
四 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者

とされており,これも人に迷惑をかけず,また「性行」とはいえない頭髪では、退学は無理であろう。

判例上も,私立高校でパーマをした生徒につき校則違反を理由に自主退学を勧告したことは違法ではない旨の判決(平成8年7月18日最高裁判所判決・修徳高校パーマ退学訴訟)はあるが,頭髪を理由とする退学や出席停止を是とした判決はないと思われる。むしろ,「丸刈りや制服着用を定める市立中学校の生徒心得は、個々の生徒に対する具体的な権利義務を形成するなどの法的効果を生ずるものではなく…」(平成8年2月22日最高裁判所判決),つまり生徒にはいわゆる校則に従う法的義務はないと解される判決がある。もっとも私立学校であれば「学生の勉学専念を特に重視しあるいは比較的保守的な校風を有する大学」において政治的活動による退学を認めた判決(昭和49年7月19日最高裁判所判決・昭和女子大退学処分事件)はあるので,退学が認められる場合がないとまではいえない。

結局,少なくとも国公立学校であれば,頭髪指導の徹底は無理である。別のいい方をすれば,自他に実害の発生しないことを禁止するのは無理である。

無理なものを徹底しようとするから(今回の大阪地裁の判決の事案とは少し異なるが)学校行事に出さないとか修学旅行に行かせないとかいった,いわば「江戸のかたきを長崎で討つ」ような筋違いなことが起きるのだろう。

これらは学校が真面目に指導を徹底しようとした結果であろうことが悲しい。(小池)

Copyright(C) Shonan-Godo Law Office. All Rights Reserved.