真理は間違いから逆算される、または、新聞記事「朝鮮人追悼碑の更新認めず 群馬県、政治発言理由に 公園法違反、異例の判断」

2014-07-24

下記の東京新聞記事を読み、哲学者鶴見俊輔の言葉を思い出した。
「真理は間違いから逆算される。間違いは間違いとして認識する。こういう間違いを自分がした。その記憶は自分の中にはっきりある。だけどこの間違いの道がこうあって、それがゆっくり考えていけば、それがある方向をさしている。それが真理の方向だ。だから真理は方向感覚と考える。その場合、間違いの記憶をぎゅっと持っていることが必要なんだ。これは消極的能力だ。負けたことは忘れない。戦中の様々な記憶を保ち続ける、それが未来だと思う(2014年7月NHK日本人は何を考えてきたか第2回鶴見俊輔)
朝鮮人強制連行追悼碑は、まさに間違いの記憶である。これをみるのは実は私も不愉快だ。自分の身内に恥をみるような感じがする。できたらなかったことにしてほしい、また、忘れたい。
しかし、この間違いの記憶を設置許可更新拒絶という形で忘れようとするならば間違いであろう。真理から遠ざかる。間違いの記憶をぎゅっと持っていることが必要である。間違いを認めて、その意味を考えることによって真理に近づくことができる。
記事によれば、県は更新拒絶の根拠として、2点を挙げる。
1「「碑文に日本側による謝罪の言葉がない」「強制連行の歴史を全国に訴えたい」などの参列者の発言を政治的と判断した。
2 12年ごろに碑文の内容に反対する団体が群馬の森で抗議活動をした点を挙げた。
しかし、1・2ともに説得力がない。日本人にとって如何に不愉快な言動であろうとも政治的表現の自由の範囲ではないだろうか。仮に碑文の設置更新が行政の裁量であったとしても上記のような理由で更新を拒絶するのは裁量権の逸脱ではないだろうか。過去の歴史に学ぶ姿勢がみられない、むしろ拒絶する姿勢でいるというのは、これこそ恥ずかしい話である(山森)。

以下、2014年7月23日東京新聞 朝刊の長い引用である。
県立公園の強制連行碑 群馬県 設置更新認めず
 群馬県高崎市の県立公園「群馬の森」の朝鮮人強制連行追悼碑をめぐり、県は二十二日、碑を管理する市民団体に対し、碑の前で開いた追悼集会で許可条件に反する政治的な発言があったとして許可を更新しない決定を伝えた。県は市民団体に碑の撤去を求めているが、市民団体は拒否し、法廷闘争も辞さない構えだ。
 大沢正明知事は「追悼碑の存在自体が論争の対象になり、県民が健やかに公園を利用できなくなるなど、憩いの場である公園にふさわしくなくなった」とのコメントを出した。
 守る会の代表世話人で元参院議員の角田義一弁護士は「政治的発言があっただけで、すぐ撤去の話になるのはおかしい。会は発言が政治的だったと認め、この一年は政治的発言を自粛してきた。撤去は絶対に受け入れられない」と反発している。
 追悼碑は、県が都市公園法の施行令などに基づき、政治的な行事をしない条件で設置を許可。二〇〇四年に「記憶 反省 そして友好の追悼碑を守る会」(前橋市)の前身団体が建立した。
 しかし、一二年に碑の前で開いた集会で在日関係の参列者らに政治的な発言があったとの指摘が外部からあり、県は今年一月末の設置許可期限を過ぎても更新に応じなかった。
 二十二日の守る会と県の話し合い後、大沢知事らが庁内で協議し、更新しないことを決めた。県によると、「碑文に日本側による謝罪の言葉がない」「強制連行の歴史を全国に訴えたい」などの参列者の発言を政治的と判断した。発言は朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」の記事が根拠で発言者に確認していないという。
 また、県は理由として一二年ごろに碑文の内容に反対する団体が群馬の森で抗議活動をした点を挙げた。
 守る会側は二十二日、大沢知事との直接の話し合いを求めた。角田氏は「その返答を待っていたのに県は一方的に不許可を発表した。大変な背信行為で、ひきょうだ」としている。守る会は今後、都市公園法などに基づく県の決定に不服を申し立てる方針。
 記者会見した県の古橋勉県土整備部長は「憲法で保障された表現の自由を圧迫するつもりはない」としている。
◆追悼碑建立の経緯◆
 追悼碑を管理する市民団体の前身「朝鮮人・韓国人強制連行犠牲者追悼碑を建てる会」は、戦後に放置されてきた県内の犠牲者を追悼し、強制連行の問題を広く伝えることなどを目的に1998年に市民らによって設立された。
 建てる会は2001年に追悼碑建設用地の提供を求める請願書を群馬県議会に提出し、全員賛成で趣旨採択された。03年に当時の故小寺弘之知事が用地の提供を決めた。
 碑文について、「強制連行」という言葉を盛り込むことなどを主張する建てる会と、認めない県との間で交渉を重ね、04年に建立された。
 碑には、アジアの人々との真の友好と連帯を結び、平和を実現する基礎にしたいという思いなどが込められている。

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