育鵬社公民教科書の問題点③ 「伝統」とはいうけれど…

2020-07-01

2006年の教育基本法改正により「伝統を継承し」(前文)「伝統と文化を尊重し」(第2条第5号)の文言が入りました。

改正に際して「この伝統とは何でしょうか。」との問いに対し,伊吹文明文部科学大臣は「伝統は何か、文化は何かというのは、具体的にそれはその人その人のとらえ方ですから、それは、これが伝統だと思われたものが伝統だということです。」(第165回国会参議院教育基本法に関する特別委員会平成18年11月30日)と答弁しています。

教育基本法が個人の尊厳を基調とし,国家が特定の価値観を「伝統」として押し付けることはできない以上,当然の答弁でしょう。

育鵬社教科書代表執筆者の伊藤隆氏は「イデオロギーにわざわいされない」 「左翼ではない」という特定の価値観を「伝統」とした上で,育鵬社教科書はこの「伝統」を引き継ぐ日本人を「つくる」ことを目指す(当ブログ6月17日付「教科書採択の『暑い夏』がやってきた」参照)というのですから,上記答弁とは相容れません。

根本的には今の日本国憲法が存在し,教育基本法がこれに則っている以上,教育基本法の文言の一部を多少いじったところで,伊藤隆氏の考え方は容れる余地はありません。

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